財政難に苦しんでいる南欧諸国が信用不安で財政再建を迫られており、その対応策として増税が相次いでいる。南欧諸国では、公務員の人件費削減など一連の歳出削減策では十分な成果を上げられず、増税に踏み込まざるを得なくなっている。
9月6日、イタリア政府は付加価値税(VAT:日本の消費税に相当)の引き上げを発表した。VATを現行の20%から21%に引き上げる方針である。今回の増税で40億ユーロ以上の税収増を見込んでいる。また、富裕層への新課税も追加された。イタリア政府は50万ユーロを上回る所得に3%の特別税を課す方針も示した。この富裕層への特別税で税収は年間2億ユーロを見込んでいる。さらに、同政府は財政赤字の上限を憲法で制定する意向も明らかにしている。
背景には、イタリアが抱える債務が1兆9000億ユーロと、スペインとギリシャ、アイルランド、ポルトガルを合わせた額よりも多く、ギリシャに続き財政が破綻し、国の借金を返済できない状態、いわゆる「債務不履行(デフォルト)」に陥る可能性が高まっていることにある。
昨年には欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)などから金融支援を受けているギリシャやポルトガルも相次いでVATを引き上げており、軒並み20%を超えている。今年1月には英国でもVATを20%まで引き上げた。ポルトガルではガスパル財務相が、15万3000ユーロを超える所得について2.5%にあたる新税を導入すると発表した。欧州各国ではVATの税率は本来高いが、日本とは異なり、食品など一部の日用品や一般的なレストランでの税率は低く抑えられている。
ただ、富裕層課税の歳入増への効果は限定的で、金融市場に対する建前として財政再建策が機能している程度だが、増税は景気を下押しする懸念がある。通常、財政再建は自国のみで立て直すことは難しく、近隣諸国の景気に支えられなければその達成は難しい。現状では欧米ともに景気減速懸念が台頭しており、増税による財政再建は困難を極めると思われる。